夏場のパフォーマンスが落ちる理由は
「脱水だけ」じゃない?
「夏になると足が止まる」「後半になると集中力が切れる」「水分を取っているのに調子が上がらない」。
こうした経験をした選手は少なくないでしょう。
夏場のパフォーマンス低下というと"脱水"が原因としてよく挙げられますが、実際にはそれだけでは説明できません。
身体は暑さに対してさまざまな反応を起こし、それがプレーの質に影響していきます。
〇水分不足だけではない?まず知っておきたい「脱水」の影響
まず代表的なのが脱水です。水分不足になると疲れやすくなるだけでなく、集中力や判断力も低下し、身体だけでなく頭のパフォーマンスにも影響を及ぼします。
〇「頑張りたいのに動けない」は身体の防御反応?深部体温の上昇
水分補給だけで解決しない理由の一つが深部体温の上昇です。
炎天下では体の内部温度が上がり、身体はオーバーヒートを防ぐためにブレーキをかけようとします。
暑い日に「頑張りたいのに身体が動かない」「足が重い」と感じることがありますが、それは気合不足ではなく、生体防御反応の一部とも考えられます。
身体はまず生命維持を優先するため、パフォーマンスを少し抑えてでも熱を逃がそうとするのです。(Périard et al.2021)
〇夏の不調は前日から始まる?睡眠と栄養の落とし穴
また、夏場は睡眠や栄養の影響も無視できません。
寝苦しさによって睡眠の質が落ちると、回復不足のまま翌日の練習や試合を迎えることになります。
さらに、暑さで食欲が低下するとエネルギー不足となり、「水分は取っているのに動けない」という状態を招きます。
そんな時は、水分補給だけで終わらせず、手軽な栄養補給も意識してみましょう。
例えば、おにぎり+ヨーグルトやバナナ+牛乳など、糖質とタンパク質を一緒に摂れる組み合わせはおすすめです。
水は飲んだ、でもガソリン切れでは身体も走れません。暑い夏こそ、気合だけでなく補給も味方につけたいところです。(Lambert et al. 2008)
〇暑さ指数(WBGT)や服装もパフォーマンスに影響する?
夏場のパフォーマンス低下には、気温だけでなくWBGT(暑さ指数)も大きく関係しています。
特に湿度が高い環境では汗が蒸発しにくく、身体に熱がこもることで深部体温の上昇や疲労感につながります。
通気性の悪いウェアや防具は熱を逃がしにくく、体温調節の負担を増加させます。
また、黒い服は熱を吸収しやすく、白い服は反射しやすい特徴があります。ただし、実際のパフォーマンスには素材や通気性、風の有無なども関係するため、「黒だから悪い」と単純には言い切れません。
実際には、WBGT28以上で「激しい運動は中止」、31以上では「原則運動中止」が推奨されており、環境条件によっては安全面への配慮も必要になります。
下記の表は、WBGT値ごとの運動時の目安をまとめたものです。
※WBGTは環境省熱中症予防情報サイトで確認できます。
〇夏にパフォーマンスが落ちる原因を整理すると…
〇まとめ
夏場のパフォーマンス低下は、脱水だけでなく、深部体温の上昇や脳の疲労、呼吸、睡眠、栄養、さらにはWBGTや服装など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
暑い夏を乗り切るためには、水分補給だけでなく、「身体を冷やす」「しっかり食べる」「睡眠を整える」、そして「どんな環境・服装でプレーするか」まで含めて考えることが大切かもしれません。
執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 石塚 智規
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック