「筋肉をつければ、もっとスピンがかかるのではないか」——。
そんな疑問を、多くのテニス愛好家が抱いています。
しかし、科学的に見ると、この考え方には少し整理が必要です。

〇スピンは筋力で決まらない

これまでの先行研究では、短距離走やボール投げといった筋力指標と、テニスのサーブにおけるスピン率(回転数)との間に、明確な関連は認められていないと報告されています。
つまり、筋力が高い選手が、必ずしも高いスピン率のサーブを打っているわけではありません。

この結果は、「筋力を増やせば自動的にスピンが増える」という考え方が、必ずしも正しくないことを示しています。
スピン量は、筋肉そのものよりも、別の要因に強く影響されているのです。

〇スピン量を左右する本当の要素

テニスのボールにスピンがかかるかどうかは、

  • ラケット面とボールの摩擦
  • ラケットヘッドスピード
  • スイング軌道(下から上への振り)
  • インパクト時のラケット面の安定性

といった、技術的・運動学的要因が大きく関わっています。
つまり、単純な「力の強さ」ではなく、「どれだけ速く、正確にラケットを扱えるか」がスピン量を決める重要なポイントなのです。

筋力が与える間接的な影響

筋力はスピン量と無関係に思えるかもしれませんが、決してそうではありません。筋力はスピンを直接生み出すものではなく、スイングを安定させる土台として間接的に重要な役割を果たします。筋力が不足すると、身体の安定性やラケットヘッドスピードが低下し、スピンの再現性も落ちてしまいます。特に重要なのは、肩甲骨を安定させる前鋸筋、体幹を安定して支える腹斜筋群、そしてラケット面を制御する前腕の回内・回外筋群です。これらの筋肉が適切に働くことで、安定したスピンが可能になります。

スピンを安定して生み出すための体幹・肩甲帯トレーニング

・前鋸筋トレーニング
方法
1. 立位で壁にてをつく姿勢をとります
2. 肘を伸ばしたまま、肩甲骨だけを前に押し出す
3. ゆっくり戻す

・腹斜筋トレーニング(バイシクルクランチ)
方法
1. 仰向け、両手は頭の後ろ
2. 片膝を胸へ、反対肘を近づける
3. 左右交互に行う

各種15〜20回×2〜3行いましょう

まとめ

テニスのサーブにおけるスピン量は、筋力そのものによって直接決まるわけではありません。先行研究が示す通り、筋力とサーブのスピン量の間に、明確な関連は認められていません。 ただし、筋力が不要という意味ではありません。筋力は、良いスピンを生み出す正しいフォームや動きを安定して再現するための土台となる要素です。主役ではありませんが、欠かせない存在と言えるでしょう。そのため、スピンを高めるためにも、筋力トレーニングは継続して行っていくことが大切です。

執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 石塚 智規

監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰

池尻大橋せらクリニック https://sera-clinic.com/